【関邸】新築工事 長野県諏訪市●H11.3.31完成
 おそらく昭和初期に開拓されたであろう、ここ長野県諏訪市角間新田の石積みの美しい棚田の片隅に、ほんの十数年前には、諏訪のいたるところに見られた建物と風景を再現してみたいという思いで建築された建物です。
 材料もできる事なら地元材を使いたい。それも工業化されずに捨てられる運命にあるもの(たとえば曲り、節くれのあるもの)を使用すること。
 また、あちらこちらの新築と同時に発生する旧住宅の廃材。その中で使えるもの(古材、古い建具,等々)は再利用したい。
 そんな思いがなんとかまとまり、民家型住宅となりました。
 また外部の風景と建物の調和の為、敷地内には、ミズナラ、栗、山紅葉などの雑木を植え、背後の山々と共に移り変わる四季を楽しめるよう考えました。
 高気密、高断熱というような、生産する側の論理だけでの住まいではなく、生活者が、何十年も住んで感じる木や壁の呼吸、自然の温かさや涼しさを知って欲しいと考えております。
 建物と風景のバランス及び建物と樹木との関係等・・・。新しく作り出される物が、それらに対して控えめであり、十分な間合いを取って納まることが、この地域での必要条件と考えています。
土間
 この建物には玄関がありません。
 この土間の空間で、日常のその辺の仕事を片付けてしまえると考えたからです。人との対面・接待から子供たちの雨降りの遊び場、はては主人の仕事場まで、毎日の生活の中で、家族が自由に使いまわせる空間と考えています。
 もうひとつ、土間の持つ保湿性です。自然が持っている保湿性を利用することによって、エコロジーで、もっと人間の体調にあった調節方法ができないかと考えています。現在、温度と湿度の変化を週単位で計測中です。
台所
▼トイレ
 台所からトイレまでの土間コンクリートは、深夜電力を利用して、蓄熱式床暖房を設置し、土間コンクリート打設時に金ゴテ仕上と同時に墨を入れ、そのまま化粧現しとしています。
 棟木には、この地方のいわれによる火災除けのための、水木(ミズキ)を皮むき丸太のまま入れてあります。(これも地元材で廃材処理された物を使用しています。)
建具
 この建物は、内部建具の数が43本あります。その内27本は過去3年間の内に、新築、移築等で、建築廃材として、処分される運命にあったものを、倉庫に保存し、再利用したものであります。
 捨てられる時点では、板戸の割れ、組子の破損等ありましたが、利用するにあたり、高さ、幅等、新築建物にあわせて修理、修正しています。
風呂
 建物を2つに分けることによって、敷地内に変化を持たせ、2棟を行き来することで、季節感を肌で感ずることが出きるのも良いと考えました。
 トイレは土間に直接据え付けてあり、浴室は、基礎工事のとき敷地内から出た、鉄平石をそのまま腰壁とし張り付けてあります。浴室は、木曽のコウヤマキの浴槽に、すのこ板張りの洗い場です。
 この棟にも、チップか薪にしかならないと思われがちな地元材の栗材、桧材、桜材の破材を使用し、建築の重要な構成要素としております。
▼トイレ
 建築という枠にとらわれず、「暮らし」という意味での「住まい」がメディアで多く特集されています。
 それだけ、「住まい」について感心が高まっているということでしょう。
▲書斎
▲居間
▲吹き抜け
▲階段

床面積/116.56(35.32坪)
1 階/91.09(27.6坪)
2 階/16.3(4.94坪)
浴室トイレ棟/9.17(2.78坪)
構 造/木造
竣 工/平成11年3月

構造
土台
木曽ヒバ材
地元サワラ材・桧・イタヤ楓材
木曽サワラ・地元赤松・水木
化粧垂木
北山・吉野杉
化粧野地板
地元唐松材
内外仕上
屋根
丸形ストレート板
外部建具
アルミサッシ+ペアガラス
木製建具+ペアガラス
天井
地元唐松材
地元サワラ材15mm
土塗り壁21mm
和室 タタミ60mm
板の間 赤松20mm
台所・トイレ 土間コンクリート
       同時金ゴテ押え(墨入り)